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「どういふことでせうね、まあ!」
と、小谷が云つた。
「あれだね、君は見かけによらない――親思ひなんだね!」
だが、房一はそれを感ずれば感ずるほど、何かしら云ひがたい不安を覚えた。それは、病症の不明な患者に対するときに間々あるやうな技術的な不安ともちがつていた。一種肉体的な恐怖、とでも云ふやうなものだつた。
それは莫迦げたことにちがひなかつた。だが、その莫迦げた習慣の中に今房一は身を以て入りつゝあるのを感じた。
徳次はきまり悪げに、しかし、又あのきよろりとした眼つきにかへりながら云つた。
「なんだ、さつぱり判らんぞう」
「さうかの。だが、さう云うても――」
だが、その間にも土手の押問答はつゞけられた。
と、今泉は一寸声をひそめた。
と生返事をしながら、大工の口にした高間医院といふ名前が耳新しく響いたので、房一は思はず微笑した。
病人は十七になる相沢の一人息子で、県庁のある市の中学寄宿生だつたが、軽い肋膜炎でかなり前から家でぶらぶらしているといふことは、昨夜来た使ひの者から聞いていた。